15 未来の先取りバックキャスト

 海藻など天然成分由来の食用膜で水を包み込めば、ペットボトルが不要になるのではないか。そんな発想でOoho!という商品が開発された。この皮膜は、風味や着色が可能で、自然環境下で生分解可能な梱包材として期待されている。このような夢の商品は、2014年に英国のスタートアップがペットボトルによる環境問題を解決することを目指し、2017年のロンドンオリンピックで利用された。

 現状の社会課題を根本から解決する可能性があるこのような発明は、我々に夢を与える。このような未来の技術シーズは、「知財図鑑」と呼ばれるWebサイト(chizaizukan.com)に掲載されており、未来の社会ニーズも併せて図鑑のように掲載されている。みなさんも、このサイトを拝見頂き、将来、活用できるような技術シーズで妄想をしてみてはどうか。

先程のOoho!の妄想例では、農薬や肥料をOoho!の食用膜で包み込み、ドローンで空中から散布すれば、ピンポントで栄養素を散布できるのではと提案している。このように未来を先取りした考え方は、ビジネスを真剣に考える際に、従来は一笑に付してしまったが、今は異なってきた。

「見えない資産が利益を生む」の著者、鈴木健二郎氏によると、アップルの成功は未来の先取りにあると言う。2007年にアップルはiPhoneを発売した。これは双方向で画像や動画を通信できるようになる5Gを予測して作られていた。5Gのサービスは日本では2020年にサービスが開始されており、10年以上先を予測して、商品開発が行われていたと言えよう。恐らく2007年の発売の数年前に、iPhoneは商品化の検討が開始されており、その時代において5Gは、妄想的な技術領域だったかもしれない。

しかし、その言わば妄想力でアップルは現在の地位にある。鈴木氏は、未来を予測する際に、現時点から未来を予測するフォアキャストの考え方と、来るべき未来を予測して、その未来から現在に戻って考えるバックキャストの考え方があるが、日本人は、フォアキャストによる考え方は得意であるが、バックキャストの考え方が足りないのではないかと提唱している。なぜなら、フォァキャストのほうが短期的な成果(売上等)に還元し易いからであろう。みなさんも、未来を長期的な視点で考えるバックキャスティングの手法をビジネスに取り入れ、長期的な戦略を検討してみてはいかがであろうか。

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