6 大企業のアイデアを自社の経営に活かせる!?

 前回、川崎モデルと呼ばれる特許マッチングにより、キューピー㈱の特許を高齢者向けの商品開発に中小企業が活用した事例を紹介した。キューピー㈱のような食品関連企業の特許は、食が豊かな宮崎では活用しやすい特許であろう。食品以外の分野でも、例えば、紫外線やプラズマによって雑菌やウィルスを死滅させたり、焼酎粕や食品残渣をバイオプラスチックの原料とするといった技術も、本県に有用の可能性があり、これらのアイデアを活用できる可能性がある。

 前回紹介した川崎モデルのように他社の特許を自社で活用する際に、アイデアの利用用途としては、以下の3つが考えられる。第1に、このキューピー㈱の例のように、自社で新たに販売する新商品開発のためにアイデアを調達することである。大牟田市内の宅配弁当事業者であるキュリアス社は、キューピー㈱が保有する根菜類を軟らかくする特許を、高齢者向けの宅配弁当に入れる煮物などに活用して新しいお弁当を開発し売上を伸ばした。すなわち、売上向上のためのアイデア調達である。

 第2に、経費削減のためのアイデア調達である。これは、自社が製造する商品や提供するサービスの経費を削減し、利益を上げるためのアイデア調達である。例えば、最近のスーパーでは、セルフレジという知財が導入されて、人件費が削減された。

 第3には、環境を配慮した製品作りのためのアイデア調達である。従来の製造工程よりもCO2排出量が抑えられる製造技術のアイデアや、製造工程で発生する殺菌処理を所定の化学薬品ではなく、環境に優しい殺菌方法に切り替えるなどSDGsに配慮したアイデアの調達である。

 これらのアイデアを自社に導入するために、まずは、貴社の経営課題を改めて見直し、課題を細分化してみてはいかがであろうか。この経営課題の中で技術的課題を抽出し、この技術的課題については、特許などのシーズアイデアが克服できる可能性がある。

 これらの取り組みを行うためには、まずは、アイデアの調査が必要であり、特許を主軸に調査するのであれば、特許書類を分析できなくてはならない。特許を出願するだけではなく、特許の検索方法や分析方法に関しての相談は、中小企業、スタートアップ企業であれば、公的に無料の相談を受けられる。47都道府県には、INPITの知的財産総合支援窓口が設けられており、ここに連絡をすれば、弁理士に限らず、特許調査の専門家等アドバイスを無料で受けられる。

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